家族を称える井手英策氏議論に見る危うさ

 本誌(『週刊金曜日』)12月14日号に慶応大学教授井手英策氏の著書『富山は日本のスウェーデン 変革する保守王国』に疑問を提示する「富山県民座談会」が掲載され、私も参加した。その主張に対する井手氏の反論インタビューも同時に載った。ここでは井手氏の主張が孕む問題点を指摘する。

  根本的な問題は、井手氏の表明するスタンスとその行動が矛盾していることだ。インタビューで井手氏は「保守層に利用」されることを怖れるといい、自身がリベラルの立場だと打ち出す。だが実際には保守の石井隆一富山県知事から県の基幹政策に関わる審議会のアドバイザーなど重要な委員を複数委嘱され、県主催のシンポジウムで司会をするなど井手氏は知事と緊密な関係にある。同氏は県より紹介された人脈に依存し、県のモデル事例を当該書でポジティブに紹介している。

 次に、困窮者への視点が弱いことだ。同氏は生活保護の受給率が全国最下位であることをもって富山の住みやすさの指標としている。しかし、富山では生活保護の申請が行政に認められる率が36.2%と全国平均50%に比べ低いことが受給率の低さの一因だ。同氏は行政が保護以外の制度を紹介しており、困窮者が救済されているというが、県議会では代替制度が使いづらいと指摘され、知事も対応の必要を認めている。

 第三に、ジェンダー視点がない。ジェンダー視点に基づき女性の生きづらさを主張した座談会に対して、同氏はそうした主張の根底には、男が外で働き妻が従うという固定的な家族像があるという的はずれな指摘をしている。座談会では、共働きでも家事負担の重い女性は生きづらいという例を示したのだが、同氏は共働きになれば女性の生きづらさはなくなると軽く考えているようだ。  

 さらに同氏は、「家族」をよいものとしてやたらに称揚する。危機の際には社会が「家族的なもの」に回帰するというが、根拠は示されていないし、そもそも座談会で「家族的なもの」による女性への抑圧を示したことへの反論にもなっていない。

 井手氏のように家族の内実を問わずに家族を称揚すると、家族を打ち出し、個人主義を弱め、社会保障を削減したい保守政治家らに利用されることが危惧される。

 また井手氏は、自身のフェイスブックの公開記事で富山座談会について「富山に住む人たちを貶める」と述べ、「廃刊になった保守系の雑誌と同じ構図」として、『新潮45』と同種の問題だとするなど、強く反発した。これは「日本を貶める」といった右翼言説にも通じ、批判を封じるものだ。LGBTへの明らかな差別である『新潮45』特集と我々を同種のものとみなすとは、論外だ。

 井手氏の議論は、女性や弱者を軽視し、個より公共を優先する点で極めて危険だ。これを危ぶみ、富山では複数の集会が開かれる予定だ。

                       斉藤正美(富山大学非常勤講師) 

本稿は、『週刊金曜日』2019年2月1日号の「論争」欄に掲載されたものです。同誌の許可を得て、再掲しています。

 

「富山は日本のスウェーデンか?」集会のお知らせ

久しぶりのポストです。2月17日に下記のような集会を開催します。

『富山は日本のスウェーデン』(井手英策、集英社新書)という富山をスウェーデンに喩える本が刊行されています。これに「とんでもない!」と大変迷惑している富山県の市民が集まって問題提起する集まりです。主催は、レッドアクションとやま*の有志でつくる「暮らしと政策を考える会」です。

とき:2月17日(日曜)10時-12時
ところ:富山市駅前CIC学習室(3F)
主催:暮らしと政策を考える会
連絡先:suzuransakura(あっとまーく)gmail.com

以下の報告を皮切りに意見交換します。
労働-女性労働~男女差別賃金訴訟の闘いから(高木睦子)
教育-シングルマザーの子育て・待機児問題(笠谷亜貴子)
子どもの権利(土井由三)
貧困-困窮者支援・生活保護受給の現場から(堀江節子)
 福祉-富山型デイはどのようにつくられてきたのか(勝田登志子)
 LGBT/SOGI(ダイバーシティラウンジ富山)など
(タイトルや詳細は変更する可能性があります)

開催意図:井手氏が富山県の政策を無批判に宣伝しているので、この集会は暮らしや文化という点から富山県の政策を問うことになります。特に今年は統一地方選参議院選の年でもあり、くらしの中でおかしいと思っているジェンダー男女共同参画や教育、福祉、LGBTなどの問題とそれに関連する県や国の政策について議論する機会とします。

富山をスウェーデンに喩えるというキャッチーなフレーズを活かして、幅広い人たちに、既成の政治への対抗的な動きを見える化していきたいと考えています。奮ってご参加ください。

富山県の政策は、安倍政権の女性・家族政策をなぞっているだけなので、安倍政権の政策批判にもつながります。この集会での議論については、全国に発信する意義があると思っています。取材などもどうぞよろしくお願いいたします。 

www.facebook.com

女性のレッドアクションとやま、明日です。

 女性のレッドアクションとやまは、明日2月19日12時半より富山駅CIC前の広場で行います。

みなさま、お気軽にご参加ください。共謀罪に関する金田法務大臣の迷走する答弁、稲田防衛大臣南スーダン自衛隊に関する答弁のひどさや、稲田大臣の罷免問題について、あるいは、メディアよ、森友学園安倍晋三記念小学校の問題を追求せよ、でもなんでも、訴えたいことを訴えましょう。

官製婚活の記事を書きました

 このところ、国や自治体が結婚支援をするいわゆる「官製婚活」について記事を書いたり、コメントをしたりということが続いています。


 まず、発端は、12月7日、ネットメディアのmessyに、「国家プロジェクトと化した「婚活」 莫大な税金投入は誰のため?」という記事を書かせていただきました。福井県富山県の自治体婚活の実態を取材して書いたものです。

 これを当事者世代の方たちが読んでくださり、twitterなどで拡散されて関心を持って頂きました。

 12月10日、東京・中日新聞特報部に、「今や一大プロジェクト 官製婚活 これって 「国のセクハラ」!?」という記事が掲載され私のコメントが載りました。

 
 年が明けて、『週刊金曜日』(1月27日号)に「官製婚活で結婚・出産を強要?」という記事を掲載していただきました。

 こちらは、富山マリッジサポートセンターを利用している方を取材し、そこでセミナーでセクハラ的な対応をされたり、マッチングシステムの実態が情報がダダ漏れだったりすることについてレポートしました。内閣府の検討会の委員の先生方の陣容や、企業子宝率という指標が算出方法がはっきりしないこと、その他「35歳から卵子の老化が始まる」って説がひそかに蔓延していることなどを書きました。ご関心のある方はぜひお読みください。

 この表紙写真は、私が福井県庁に行って撮ってきた写真なのですが、表紙にまで載り、びっくりいたしました。

 また、1月27日に、日本学術会議公開シンポジウム「家族とジェンダーをめぐる法律案・制作がはらむ諸問題」(主催:日本学術会議社会学委員会ジェンダー政策分科会)で、スカイプを経由して、「「官製婚活」について—家族に介入する国家」という報告をさせていただく機会までいただきました。

 というわけで、思いがけず、最近は「婚活」や「結婚支援」の実態を調査し、報告する機会に恵まれ、長らく放置したブログでしたが、また時々は書いていこうと思っております。


 

安保法案廃案を求めて、女性グループ、レッドカードを郵送

 KNB 北日本放送で、タイトルのようなニュースとなり、女性のレッドアクションとやまの「レッドカード」を集めて国会議員に意見を届ける活動が紹介されました。サイトにあがっています





 ただし、主な意見として、「自民党さん、見損なった、次の選挙では入れません」という意見も多かったのですが、それはスルーされました。

そこで、こちらの発表資料を以下に添付して、お知らせします。



 2015年8月21日県政記者クラブ発表資料  女性のレッドアクションとやま実行委員会

自民党国会議員に対するレッドカード
——女性のレッドアクションとやまに寄せられた安保法案反対の意見——


1. レッドカードとは
 レッドカードとは、国会で私たちの声を代弁して安保法案の審議に当たる富山県選出自民党国会議員に対して、選挙民である私たちが安保関連法案に反対している理由や意見をカードに書いて、直接それを議員に届けるツールです。
 富山県選出国会議員で、安保関連法案に衆議院で賛成した自民党議員は、田畑裕明(富山1区)、宮腰光寛(富山2区)、橘慶一郎(富山3区)の3氏。今後、参議院で賛成すると見られているのは、野上浩太郎堂故茂(いずれも富山全県)の2氏。
5月31日に最初の「戦争をゆるさない 女性のレッドアクションとやま」行動を行った際に、富山で行っている行動が国会議員に届かないもどかしさを抱えました。そこで、7月25日の「戦争をゆるさない 女性のレッドアクションとやま」第二弾では、我々の反対の意志をどうやって国会議員に伝え、国会審議に反映してもらえるかを考え、レッドカードというツールをひねり出しました。
第二弾行動の七月25日、ポストに入りきらないほど集まったレッドカードは145枚。1枚には8名宛の意見が書かれており、集まった声は私たちの想像を超え、1,100筆に届きました。
意見の中には、国民を戦争に巻き込まないことが政治家の役割、という考えが多く見られましたが、そう考える人たちからは、国民の意見を尊重できない政治家にはレッドカードを渡して、退場願いたい、そう考えた方もおられたようです。
# 配布したレッドカードの実物は、別に添付

2.レッドカードを寄せた方の属性  
 記入された市町村名を見ると、地域の偏りもなく、富山市黒部市、朝日町、入善町魚津市上市町立山町滑川市高岡市射水市小矢部市砺波市南砺市氷見市など県内全域からでした。ニックネームも可としたので、寄せられた声の主の性別年齢の詳細は不明。自己申告により判明したのは、8歳から92歳までの声があったこと。名前から見る限り、女性のみならず、男性の声も2〜3割程度ありました。

3.レッドカードに見る県民の主な意見
 1,100筆に及ぶレッドカードの意見は、安保法制に関するものだけでなく、平和憲法や平和とは何か、沖縄辺野古の新基地問題脱原発、「慰安婦」問題など多岐に及んでいました。
 以下では、主な意見として3つの方向の具体的な意見をご紹介します。


1)悲惨な戦争を体験したからこそ、子や孫に戦争させるわけにはいかない

・ 「母親から戦争の苦労話を聞かされてきたから今の平和をなんとしても守りたい」
・ 「10歳で終戦になった。戦中戦後の生活は空腹と不潔の思い出ばかり。あの時代には戻りたくない」
・ 「私は戦争体験者。戦時中、物が言えなかった、家が空襲で焼けた。ひもじい子ども時代を再び、子どもや孫に体験させたくない」
・ 「私の父は戦死したのだから、もう絶対絶対、戦争はダメ」
・ 「私の父は戦争では死ななかったが、経済統制で商売できなくなりおまわりさんに捕まって自殺を図り寝たきりに。戦争は絶対にダメ。自民党の皆さん、お願いです、この法案を通さないでください」


2) 国民を戦争に巻き込まないことこそ、政治家の役割だ

・ 「積極的平和主義は、武力を使ってすることですか」
・ 「武力で平和は守れない。当たり前のことがわからない人に政治は任せられない」
・ 「何事も暴力で解決しない社会を」
・ 「あなたがまず、戦地に出かけて下さい」
・ 「平和の意味を学んで下さい。武力より外交で問題を解決していこう。」
・ 「日本国民を守るためには、どこの国とも仲良く、少々損をしたっていいではないか。戦争をして原発にミサイルでも撃ち込まれたどうするのですか」
・ 「政治家の仕事は、国民を戦争に巻き込まないことが第一です」
・ 「私のこどもや孫を戦争に巻き込む法案はやめてほしい」
・ 「戦争で最初に死ぬのは、弱者です」
・ 「戦争を美化すること、戦争を金儲けの道具にすることを止めさせよう!」
・ 「誰も侵略のためと戦争を始めません。『自国を守るため』といって始まるのです!」
・ 「ある日、朝起きたら戦争が始まっていたということがないように」

3) 自民党さん見損なった、次の選挙ではあなたに入れません
・ 「自民党の中でもこれまで戦争に反対の立場で頑張っていた人もいるのに、なぜ安倍首相にみんなモノが言えないのですか。」
・ 「自民党、昔は良心的な人も多かった。今の人は良心どこへやったの?」
・ 「議員の皆様、本当に安保法案に賛成ですか。自分の子どものことを考えていますか?」
・ 「●●さん(国会議員名)、見損ないました」
・ 「あなたには投票しません」「次の選挙は、自民党に入れません」
・ 「アベ首相、即刻退場。アナタもね。」
・ 「選挙の時だけ頭を下げるのはよしてください。平和の願いを政治に生かしてください。」


 

女性のレッドアクションとやま 第三弾のお知らせ

 女性のレッドアクションとやま第三弾は、8月29日土曜 11時より富山駅CIC前の広場で行います。


みなさま赤い物を身につけて、お気軽にご参加ください。男性の方、初めての方、大歓迎です。



戦争を許さない女のレッドアクションとやま第二弾 7月25日

 戦争を許さない女のレッドアクションとやま、第二弾を、7月25日午前11時から富山駅CIC前広場で行います。なにか赤いものを身につけてアピールします。お友達に声かけあってご参加ください。

 


 手作りのプラカードをもってきてください。また、富山県選出の国会議員にレッドカードをわたします。皆さんそれぞれ思っていることを書いて、国会で私たちを代表して立法に当たる県選出国会議員に渡しましょう。

 ちなみに、富山県選出国会議員で、安保法制に賛成している自民党の議員は、富山1区に該当する市町村にお住まいの方は、田畑裕明議員(衆議院)、野上浩太郎議員(参議院)、堂故茂議員(参議院)、山田俊男議員(参議院比例)の4名あてとなります。

 また富山2区に該当する市町村にお住まいの方は、宮腰光寛議員(衆議院)、野上浩太郎議員(参議院)、堂故茂議員(参議院)、山田俊男議員(参議院比例)の4名あてとなります。

 富山3区に該当する市町村にお住まいの方は、橘慶一郎議員(衆議院)それに、野上浩太郎議員(参議院)、堂故茂議員(参議院)、山田俊男議員(参議院比例)の4名あてとなります。

 ですから、いずれにしろ、同じ内容を4枚書いていただく必要があります。

 このほか、参議院議員では、維新の党の柴田巧議員、社民党又市征治議員もおられます。そちらへの激励という形もいいかもしれません。



 下記にそのフォームを添付します。ダウンロードして使ってください。なお、書かれたものは当日ご持参下さい。
また、来られない方は、7月24日までに、あてに送って下さい。当日届けます。