フェミニズムとインターネット問題を考える

 6月21日にフェミニズムとインターネットの研究会を企画している身には、ちょっと予想外なことだが、いまフェミニズム界隈では「フェミニズムとインターネット」が旬の話題っぽい。ウィメンズアクションネットワーク(WAN)が設立され、その記念のつどいが昨日京都で開催された。今後、名古屋、東京でも開催される予定だという。このつどいに参加して、「フェミニズムと“インターネット問題を考える”」ことが今、とても重要であることを再確認した。


 ちょうど用事で関西に行っていたので、昨日京都で開かれた「今始まる! ウエブがつなぐ女たち」というNPO法人ウィメンズアクションネットワーク(WAN)設立記念のつどい」に顔を出すことができた。会場は200人を超える参加者であふれていたし、一部のハイな熱気はちょっとびびってしまうくらいだった。今日は「歴史に残る一日になる」という大仰なフレーズが飛び交い、インターネットやポータルサイトに熱い関心が注がれていた。このつどいについては、みどりの一期一会さんで紹介されているのでご覧いただければ、流れはつかめるでしょう。でもって、サイトはここ

 ただし、参加者からは、登録者のみの安心できるサイトで安全な情報交換と銘打っているが実際だれでも入れる状況なのはどうなのか、登録の承認にはどういった基準を設けるのか、といったサイト運営上の課題についてもいろいろ質問が出ていた。公開の女性ポータルサイトが運動にとってどんな有効な手段となりうるのか、既存のメーリングリストを超える活動としてどういった可能性があるのか。わたしも、メーリングリストですらだれが入っているかわからないし、議論がヒートアップしてうまくいかないことも多いのに、より公開度の高い大型ポータルサイト掲示板をどうやって運営していくのだろうと思った。シスターフッドはいいのだが、シスターフッドといって真逆の考え方の人たちが参加して来られた場合にどういった基準で参加承認を行うのか、むしろいろいろ問題が起きそうなことが予想されて心配になった。

 さらに、今朝からインターネットを検索したのだが、参加してきたという報告や交流会の様子など、きのうのWAN集会について書いた記事が数えるほどしかみつからない。「めざせ(一日)100万アクセス」(上野千鶴子さん)とおっしゃるのであれば、ブログ記事などさくさく書いていろいろと盛り上がっていなくては・・・。会場でのインターネットへの関心の高さのわりに、インターネット界ではほとんど話題になっていないのはどうなのか。うーん、これはどういうこと? もしかして、女性のポータルサイトへの期待が大きいことと自体、ウエブ世界をあまり知らない人たちが熱くなっているってことはないだろうか。フェミニズム界隈でインターネットが旬の話題ということ自体、ウエブに浸っている人間からしたら、どうして今さら?という疑問が沸くところだ。しかもポータルサイトづくりが熱い期待を集めていること自体、ブログやmixitwitterfacebookなど多様なウエブ世界を知らないからこそという面もあるんじゃないかという気がした。もしかして、インターネットが旬の話題になるほど、フェミニズム界隈がインターネットに乗り遅れているということなのかもしれないとも思う。

 WANのつどいが終わってから、上野さんのところに走った。わたしたちの6月研究会のチラシを渡すためだ。「リスクマネージメントにぜひ」といってチラシを渡したところ、上野さんは、「知ってるでしょ、わたしは弱者だから。ITの・・」と、わたしにチエを出すようにとおっしゃられた。だけど、これまでのフェミニズム運動の経験を振り返り失敗を繰り返さないようにするのが一番のチエになると思い、研究会にぜひご参加くださいと伝えた。

 きのう集まった人たち、またWANを運営している主催者の人たちの大半が、ネットを実際に活用したことのない人たちなのだとしたら、これから問題が起きないようによほど注意が必要だなと強く思った。フェミニズムとインターネットに期待するみなさんには、わたしたちが企画する「フェミニズムとインターネット問題を考える」研究会にもご参加いただきたいと思う。

  私たちが6月21日に大阪で開く「フェミニズムとインターネット問題を考える」研究会は、フェミニズムがインターネットの活用がうまくできずに失敗した事例について検証するというWAN に関心を注ぐみなさんにはドンピシャの企画である。日本のフェミニズムがネットの効果的活用自体ができていないという問題意識から、フェミニズム市民運動がネットを利用するためにどういった課題があるか、どう対応したらいいかを考えるために、これまでの経験を検証するというものだからだ。
 
 フェミニズム回りで今ようやくインターネットが旬の話題になるというのは、実際に多様なウエブ世界を知らないからこそだとしたら、わたしたちの「フェミニズムとインターネット問題を考える」研究会がリスクマネージメントの機会となること、間違いなしだ。ここにチラシを貼っておきます。かとうちひろさん作成です。関心のある方、どうぞごいっしょによりよい活用のために議論しましょう。ということで「フェミニズムとインターネット問題を考える」研究会のお知らせをいたします。

フェミニズム運動はML、ブログ、ホームページなど、ネット媒体をどのように使ってきたのでしょうか。そして、ネットにおける人権侵害や「炎上」などの失敗例はなぜ、どのように引き起こされるのでしょうか。インターネットは市民運動の広がりに大きな役割を果たすことができますが、日本のフェミニズム運動の場合、ネットの効果的利用自体がまだまだできておらず、失敗例も目立っています。

フェミニズムとネット問題研究会では、インターネット上で深刻な人権侵害問題を引き起こしてしまったフェミニズム運動体に関わった当事者としての視点から、その運動およびネット利用の分析、検証を行ってきました。フェミニズム市民運動がネットを利用するために、どういった課題があるのか、どう対応したらいいのか、などについて考えるために、自らの検証結果を題材とした公開の研究会を開催します。

ネットと社会運動に関心ある方のご参加をお待ちします。

日時:6月21日(日)13:00−16:30

場所:大阪市 弁天町市民学習センター 特別会議室

〒552-0007 大阪市港区弁天1-2-2-700(オーク2番街7階)

(地下鉄中央線「弁天町駅」西口2A出口より徒歩3分 JR環状線「弁天町駅」北口より徒歩3分)

http://www.osakademanabu.com/bentencho/

発言予定者:かとうちひろ、きろろ、斉藤正美、田丸瑞穂、遠山日出也、宮下奈津子、山口智美 ほか

参加無料

問い合わせ先:斉藤 saitoh(あっとまーく)p1.tcnet.ne.jp

主催:フェミニズムとネット問題研究会/グローカルフェミニズム研究会

(この研究会は、サントリー文化財団の「人文科学・社会科学に関する研究助成」プログラムによる助成を受けて開催されます。)