慰安婦問題、ピンチをチャンスに変えよう!

 朝日新聞が8月5日「慰安婦問題を考える」特集で、過去の吉田清治証言に基づく記事を取消して以降のメディアの朝日新聞叩きは異常である。産経新聞は、ずっと慰安婦問題で論陣を張ってきているからまあそうだろうと思うが、これまで慰安婦問題にそう熱心でなかった新聞や週刊誌、月刊誌などあらゆるメディアが総出で朝日新聞の記事取消騒動に乗じて、朝日新聞が記事を取り消したゆえに、「慰安婦問題は捏造」だったという言説をまき散らしている。これについての反論は、wam女たちの戦争と平和資料館事務局長の渡辺美奈さんによる
「論点1:朝日新聞が世界の世論をつくったか?」を参照ください。
 しかも、それに乗じて安倍首相が朝日新聞の報道によって日本軍の兵士が「人さらい」のような強制動員を行ったかのように誤解されており、国際的に「日本の名誉」を傷つけたという言いがかりをつけ、朝日新聞に注意を促すという政治家にあるまじき言論介入を行っている。


 言いがかりだという理由は、「2007年3月の安倍総理大臣の「狭義の強制はなかった」発言」が現在の国際的な非難の原因となった、という渡辺美奈さんのwamblog - アクティブミュージアム 女たちの戦争と平和資料館 -「論点3:では現在の国際的な非難の原因を作ったのはだれか?」を読んで頂くのがわかりやすいと思うのでリンクしておきます。2007年の安倍総理の「狭義の強制連行」否定発言により、意に反して慰安婦にされていたという事実さえも日本では否定されていることが当時の安倍総理の発言で世界に知れ渡り、それは今考えるべき女性の人権問題であることが世界に知れ渡ったと渡辺さんは指摘している。非常に明快な事実である。しかし、この事実もメディアの大合唱の前にはかき消されそうなくらいな小さな声に思われる。ちなみに、渡辺さんの主張を動画で見たい方はこちらにあります。


 安倍首相の朝日への忠告に加え、自民党からは、国会に朝日新聞を召還せよという意見も出ている。だが、こうしたメディアへの政治介入的言説に関して、野党政治家からも他のメディア媒体からも危機感を煽る声はあまり聞こえてこないように思われる。その点でも、朝日新聞問題は、非常に深刻なメディア界隈の状況を浮き彫りにしていると思う。この点は、また別途書いていきたいと思っている。


 朝日新聞慰安婦報道やそれへの集中豪雨的批判は、拙ブログのテーマである「ジェンダー」と「メディア」の双方に関わるテーマである。「慰安婦」問題がテーマとなっている今こそ、フェミニズムが反撃する好機でもあると思うが、いまいちフェミニズム界隈での反撃が、従来「慰安婦」問題に取り組んできた一部の人たち以外に広がっていないように思えて、とても残念な気がする。そういう状況を見ると、慰安婦問題にそう詳しくないからと躊躇しているのはまずいんじゃないかと思い始めてきた。


 これから少しずつ、気になったことなどメモでも書き留めていきたい。そして、説得力のある主張については、少しでも拡散していこうと思う。危機感を共有し、対抗言論を拡散していくことが何よりも大事だと思うからだ。ピンチこそ、反撃のチャンスとしたい。