クラスに中国人留学生が在籍している。それで、反日デモ報道を取り上げた。『五・四(運動)」の日にデモが『封じ込められた」というスタンスの記事でした。確か東京新聞の5月5日付けの記事でした。それを基に留学生にいろいろ感想を話してもらったのですが、その中に「日本は良い国である。ただ、日本の過去を、特に1900年代の歴史を日本の学生は勉強しているのだろうか? 中日戦争で、日本が中国の土地で何をしてきたのかよくわかっているのだろうか。日本の歴史教科書で中国の侵略のことが教えられているのでしょうか」という問いかけがあった。
そこで、1900年代に日本は中国で何をしてきたのかを調べてくることにした。それと同時に、高校時代の歴史教科書を持ってくるように言った。
翌週、学生が持参した教科書を比べて話し合った。受験用と学生が言っていた山川出版の歴史教科書は、詳しいだけで歴史的な脈絡がわかりづらい。その一方で、実教出版の教科書は日本がアジア諸国でどれほどの人に被害を与えたか、「大東亜共栄圏ー日本の加害」というグラフ(スキャンで添付)があり、『日本の侵略に伴う各地域の死者数(推定)」データをリアルにわかるように地図上にグラフで図示している。それによると、中国人(軍人と民間人)の死者は1000万人に及ぶ。1944-45年のヴェトナムでの餓死者200万人とか、フィリピンの死者111万人などとある。
踏まれた痛さは忘れないけど、踏んだ方は痛みがわからない。「日本軍は中国で何をしたのか――軍国日本と中国侵略」という章がある。高校時代にこのようなインパクトがある教科書で丁寧に教えられているならきっと理解が違うだろうなという印象を持った。但し、受験のためにはこのような教科書は適さないと言われるのかもしれない。
そうそう、クラスで教科書比較をしていたら、『南京大虐殺」というのと『南京事件』という呼び方に分かれていた。しかし、中国では『南京大屠殺」というのだそうだ。それは、殺害方法が動物を殺すような方法だから屠殺とあえて言って、その残虐さを忘れないでおこうというものだという。「名づけ」が単に名前だけ、というのでは決してなく、『定義づけ」であること、認識を表すものであることをよく表している。
中国人留学生さんのおかげで日本の学生も、意欲的に調べてくるし大変リアルな勉強になっている。私も毎回、学生とのやりとりや学生のディスカッションが楽しみとなっている。