東大ジェンダーコロキアム報告部分全文アップ:「ジェンダーフリー」
東大ジェンダーコロキアム「『ジェンダーフリー』概念からみえてくる女性学・行政・女性運動の関係」(2004年12月16日)の報告者山口智美、山下清子さん、斉藤正美、長谷川美子さん、教員Aさん(報告順)の5名分の報告とそれぞれに対する上野千鶴子さんのコメントの全文を以下にアップいたしました。
日本の女性運動の流れの中で、1995年代半ば以降、一部行政を中心に「ジェンダーフリー」教育や「ジェンダーフリー」政策が目立つようになってきました。そして2000年前後には日本の男女平等政策は「ジェンダーフリー」政策に収斂されたと思っておられる方も多いのかもしれません。
しかし、それ以前から男女混合名簿を進める運動は着実に実現されていたし、「ジェンダーフリー」を使わず「男女平等」を掲げた女性運動も「ジェンダーフリー」がさかんに叫ばれた同じ時期に全国各地で〔目立ちはしなかったが)粛々と展開されていたことがご理解されるはずです。
「ジェンダーフリー」議論をもっと知りたいという方、男女平等問題の解決に関心のある方など、ぜひご一読下さい。
http://homepage.mac.com/saitohmasami/gender_colloquium/gencolre1.htmhttp://www.webfemi.net/?page_id=30
東大ジェンダーコロキアム「『ジェンダーフリー』概念からみえてくる女性学・行政・女性運動の関係」
報告者発表全文テープ起こし原稿公開!!
他にも、http://homepage.mac.com/saitohmasami/gender_colloquium/B.htm「女性学と女性運動の資料」サイトなどにも、山口智美さんと斉藤の関連テーマのエッセー、論考をたくさんアップしております。こちらもご参考まで。
【2010.01.19:リンクに手を入れました。】
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なお、関連情報です。
上野さんの東京都国分寺市での人権講座が東京都のクレームで中止になった件で、上野さんがさる13日出された公開質問状の全文を公開されています(転載可とのことです)。これもアップしておきます。
=2006年1月13日
公開質問状
平成17年度における文部科学省委託事業「人権教育推進のための調査研究事業」に
ついて、私を講師とする事業計画案を都教育庁が拒否した件について、国分寺市の
「人権に関する講座」準備会のメンバーおよび、2005年11
月20日に開催された「人権を考える市民集会」参加者から、経過説明を受けました。
また2006年1月10日付
け毎日新聞夕刊報道「「ジェンダー・フリー」使うかも・・
・都「女性学の権威」と拒否」(別送資料1)によって、都の発言内容が一部明らか
になりましたので、以下の事実について、説明を求め、抗議します。
(1)今回の国分寺市の委託事業の拒否にあたって、都および市のどの部局がいかな
る手続きによって意思決定に至ったか、その責任者は誰であるかを、私にお示しくだ
さい。
(2)その際、上野が講師として不適切であるとの判断を、いかなる根拠にもとづい
て下したかを、示してください。
なお、報告と報道にもとづいて知り得た限りの、都の説明に対する反論を、以下に記
しておきます。
1)今回の講師案は「人権講座」であり、「女性学」講座ではない。講演タイトルに
も内容にも「女性学」が含まれないにもかかわらず、「女性学」の専門家であること
を根拠に拒否する理由がない。それならば、今後、この種の社会教育事業に、女性学
関係者をいっさい起用しないということになる。
2)女性学研究者のあいだでは、「ジェンダー・フリー」の使用について一致がなく、
一般に私を含む研究者は「ジェンダー・フリー」を用いない者が多い。さらに私は、
「ジェンダー・フリー」を用語として採用しない立場を、公刊物のなかで明らかにし
ている。(別送資料2)都の判断は、
無知にもとづくものであり、上野の研究内容や女性学の状況について情報収集したと
は思えない。
3)とはいえ、私自身は「ジェンダー・フリー」の用語を採用しないが、他の人が使
用することを妨げるものではなく、とりわけ公的機関がこのような用語の統制に介入
することには反対である。なお、「ジェンダー・フリー」という用語について申し述
べておけば、「ジェンダー・フリー」を「体操の着替えを男女同室で行うなど、行き
すぎた男女の同一化につながる」という「誤解」が生じたのは、「誤解」する側に責
任があり、「ジェンダー・フリー」の用語そのものにはない。
4)毎日新聞報道によれば、都の説明は「上野さんは女性学の権威。講演で『ジェン
ダー・フリー』の言葉や概念に触れる可能性があり、都の委託事業に認められない」
とある。私は女性学の「権威」と呼ばれることは歓迎しないが、女性学の担い手では
ある。都の見解では、「女性学研究者」すなわち「ジェンダー・フリー」の使用者、
という短絡が成り立ち、これでは1)と同様、都の社会教育事業から私を含めて女性
学関係者をいっさい起用しないことになる。
5)上記、都教育庁生涯学習スポーツ部の説明では、「『
ジェンダー・フリー』の言葉や概念に触れる可能性があり」と婉曲な表現をしている。
だが、「可能性」だけで拒否の理由とすれば、根拠もなく憶測にもとづいて行動を判
断することになる。そうなれば、「『ジェンダー・フリー』の言葉や概念に触れる可
能性がある」との理由で、女性学研究者はすべて都の社会教育事業から排除される結
果となる。
6)もしそうではなく、他の女性学研究者は講師として適切であり、上野だけが不適
切であるという判断を都がしたのであれば、その根拠を示す必要がある。
7)上野は、他の自治体の教育委員会や人権関係の社会教育事業の講師として招請を
受けている。また解散前の東京都女性財団に対しても、社会教育事業の講師として貢
献してきた。かつての上野に対する都の評価が変化したのか、あるいは他の自治体と
くらべて都に上野を拒否する特別な理由があるのか、根拠を示してもらいたい。
8)以上の都の女性学に対する判断は、女性学を偏った学問と判定するこれこそ偏向
した判断であり、学問として確立された女性学に対する、無知にもとづく根拠のない
誹謗である。
以上の反論をふまえたうえで、上記2点の質問に対する回答を、1月末日までに、
文書でお送り下さるよう、要求します。以上、内容証明付きの郵便でお届けします。
なお、同一の文書は主要メディアおよび女性学関連学会にも同時に送付することをお
伝えしておきます。
上野千鶴子
東京大学大学院人文社会系研究科教授
東京都文京区本郷7−3−1
資料1:2006年1月10日付け毎日新聞夕刊報道「「
ジェンダー・フリー」使うかも・・・都「女性学の権威」と拒否」
資料2:上野インタビュー「ジェンダーフリー・バッシングなんてこわくない!」
『We』2004年11月号(p2-19)
(資料は別送)
なお、宛先は以下です。
東京都新宿区西新宿2−8−1東京都庁
東京都知事殿
東京都新宿区西新宿2−8−1東京都庁
東京都教育長殿
東京都新宿区西新宿2−8−1東京都庁
東京都教育委員会委員長殿
東京都新宿区西新宿2−8−1東京都庁
東京都教育庁生涯学習スポーツ部社会教育課長殿
東京都国分寺市戸倉1−6−1国分寺市役所
国分寺市長殿
東京都国分寺市戸倉1−6−1国分寺市役所
国分寺市教育長殿
東京都国分寺市戸倉1−6−1国分寺市役所
国分寺市教育委員会委員長殿
東京都国分寺市戸倉1−6−1国分寺市役所
国分寺市教育委員会生涯学習推進課長殿
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