「国営お見合」に思う男女共同参画と少子化のあやうい関係
最近の報道では、ついに猪口邦子大臣までが少子化対策に国営の「お見合い」をするということを言い始めたらしい(「お見合国営で『少子化対策』猪口氏が案」朝日新聞5月19日付け)。http://www.asahi.com/life/update/0519/001.html#2006
「猪口少子化担当相が、政府の責任で『お見合パーティ』など、独身男女の出会いの場を設ける案を閣内で打診していたことがわかった」とある。
で、そこに、国策で結婚や子産みの奨励をすることがまずいという発想は見られなかった。男女共同参画と矛盾するっていう見方がないことに驚いた。単に、「効果が見込みにくい」って意見があるだけで、反対意見も効果があるかどうか論だけだったように読めたのだ。
これって、男女共同参画に含まれているリプロダクティブ・ヘルス/ライツという考え方とぶつかるでしょう。どうしてそういう見方が全然出てこないのか?!
リプロダクティブ・ヘルス/ライツについては、政府もその施策の基本的方向で「女性の生涯にわたる健康の保持」だって書いている。http://www.gender.go.jp/kihon-keikaku/2-8h.html
「女性がその健康状態に応じて的確に自己管理を行うことができるようにするための健康教育、相談体制を確立するとともに、思春期、妊娠・出産期、更年期、高齢期等各ステージに応じた課題に対応するための適切な体制を構築することにより、生涯を通じた女性の健康の保持増進を図る。」
こういう話になっていったら、男女共同参画推進を担当する職場で働いている人たちは率先して少子化問題に取り組めってことになり兼ねないゾ。女性センターがお見合いパーティを企画したり、子産み、子育てがすばらしいって講座を組むことを想像したら・・・恐ろしい。これじゃあ、男女共同参画基本法が骨抜きになる。
さらに、こういう職場で働いている女性職員には率先して、早く結婚しなさいよ、たくさん子どもを産みなさいよ、っていうことになったら、って考えると、何の為の「男女共同参画」だったのか、人口対策だったのか、ああってことにならねばよいが・・杞憂に終わればいいが、とても心配である。
猪口大臣は、学者さんだから当然、リプロダクティブ・ヘルス/ライツの問題はよくわかっておられると思うし、少子化対策担当大臣だからといって産めよ増やせよではないとよくおわかりだと思う。しかし、こういう報道をみる限りでは、政府が「産めよ増やせよ」や結婚奨励策をとっているという短絡化した世論につながるような気がする。だってその方がわかりいいから。
「少子化・男女共同参画」」大臣っていう職名が、「男女共同参画」が少子化をくいとめるためのものと理解されていくことにもつながっている。
そもそも、1999年に制定された男女共同参画社会基本法の前文に、唐突に、少子高齢化のためにこの法律が必要という状況説明が入っていた。そのことの悪影響が直接担当する大臣が任命された今になってじわじわと来ているのではないか。
「 一方、少子高齢化の進展、国内経済活動の成熟化等我が国の社会経済情勢の急速な変化に対応していく上で、男女が、互いにその人権を尊重しつつ責任も分かち合い、性別にかかわりなく、その個性と能力を十分に発揮することができる男女共同参画社会の実現は、緊要な課題となっている。」
いずれにしても、今後政策や状況をウオッチしていくことが必要だ。