保育士に離職者が多いのはどうしてか
ある専門学校で新学期に向けて非常勤講師を集めての打合せ会があり出席してきた。自由に意見をいう時間になったところである先生から、最近、町で卒業生に会うと仕事を辞めたという人が多くなっているようだけど、そういうことにならないような授業をしたいので、詳しい状況がわかったらおしえてほしいという質問が出た。学校側からは、データはないけど印象として、保育現場で働いていると、自分の子供をもったら自分の手で育てたくなるケースが多いように思うという説明がされた。それじゃ「三歳までは母の手で」というのがまたぞろ復活しているということで問題ですよねというような話がでていた。話しをしていた方はわたしの知り合いで私にも何かいうようにと目を向けられた。わたしはこの日、「斉藤さん」の観月ありさのように、正義感だけはある斉藤ですと自己紹介していたのだった(笑)。「さあ、あんたも言ってよ」と視線を向けられたら、テーマがテーマだから黙っているに忍びなく発言してきた。
待遇のことを持ち出した。結婚してやめるのは単に女性が子育てをしたがっているから、というような話ではないと思ったからだ。わたしがその学校の授業の時に、教室に張り出されていたのでみた求人票によると、保育士は、正規公務員以外だと、せいぜい月額13万とか14万程度であった。私立だと結婚したら一旦退職させられてパート扱いにさせられるところもあるということだから、単に「三歳までは母の手で」という信仰で仕事を辞めているというより、働く条件が悪すぎたり、仕事がきつすぎて子育てと両立できないためにやめるのではないか、実情調査をぜひしてくださいとお願いした。
すると、他の方からも私立の幼稚園では経験を経るに従って毎年給料が下がるところもある。公立から民間委託になる保育園もあるが、公立に準じるといわれているが、それは1年だけのこと、2年目からはどんどん条件が悪くなり、仕事だけはきつくなっている、という話が出た。そして話は、保育士の給料の安さ、働く条件の厳しさに移っていった。今年は男子学生も学校始まって以来の人数になると聞いた。保育士はこれまで女性の職種だということで、給料は低く抑えられてきている。男子の卒業生で食べていけないからと一般企業に移って給料が遥かに高くあがったと喜んでいる人もいるという話も出た。学校側からは、女の職場なので当事者たちはあまり改善を打ち出していかないところがあるようだから、社会で発言の場のある先生方から、ぜひ社会に訴えてくださいと言われた。それもうん?という感じだ。
保育や福祉・介護の仕事の待遇があまりにも低く抑えられているのは、ケア役割が女性の仕事とされてきたこと、それは女であればだれにでもできる(気配りなど)感情労働という人々の認識と結びついているのでとても頑固であり、そう簡単に変わらないと思うと、どこから手を付けていいのかという気になった。しかしそう思っているだけでは前進がないので、そういう状況を変えるための一歩として、しっかりとした調査が必要なのではないか。
あのコワレソウな赤ちゃんや手こずるキッズたちを相手にひがな格闘しても、富山県内では月給が公立以外では13−4万円だ。これは仕事に見合った額であろうか。あれほど学校時代はいきいきと子どものことを語る、子どもに接している学生たちが仕事についても待遇の悪さや仕事のハードさから辞めてしまうのは残念だ。なんとか方法はないのかと思う。予算がなくてーということだったが、まずは、卒業生の実態調査からしか始まらないのではないかと思った。