すてっぷ裁判傍聴記

とよなかすてっぷ初代館長三井マリ子さんの雇い止め裁判の控訴審の傍聴に山口智美さんと大阪まででかけてきた。この裁判、わたしは支援者ではあったが、傍聴は初めてだ。傍聴といっても実際の審理はない。傍聴者のためと思われる寺沢勝子弁護士による今回提出意見書の要旨読み上げがあったものの、実質は単に事務的な日程の打ち合わせだけであった。時間にして25分くらい。傍聴は裁判官3名と原告、原告側弁護人6名、被告側弁護人4名の顔ぶれをふーんと眺めただけであった。それだけの傍聴にもかかわらず、傍聴者は40名程度と多かった。また、遠方からの参加者も多かった模様だ。

傍聴後の中之島公会堂での交流会にも参加してきた。70名ほどの方が熱心に参加されていた。また、MASAバンドの演奏もあった。そこで準備書面などをいただいた。控訴審では、労働法のご専門である脇田滋さんの意見書も出されたということで脇田さんも交流会に出席されていた。脇田意見書では、男女共同参画センターは、パート労働を通常労働に転換することを率先してやるべき場所であるからこそ、非常勤館長を積極的に常勤にする義務があるにもかかわらず、常勤化しておきながら、非常勤であった三井さんを常勤に据えることをしなかったのは不当だという主張のようだ。この議論は方向としてはよくわかる議論である。しかし、脇田さんは、館長という管理職を一般労働者と同じ次元で論じておられる点でちょっと受け入れがたい。ヒラの職と管理職である館長とでは常勤化の意味合いが違うのでないだろうか。受付などの事務職をパートから常勤にするのは正しい方向であると思う。だが、館長職は首長の政治的背景などいろいろな政治力学により人が決められることも少なくない。そういう方をみな非常勤から常勤にすべきだとは言えないと思う。「名ばかり管理職」が最近問題となってはいるものの、三井さんの場合が「名ばかり管理職」に該当するとは言えないだろうし、ヒラと管理職を同列に扱えないと思う。ましてやこの論理、裁判で認められるだろうかと思った。
そこで、会場で直接、脇田教授にその点を質問してみた。判例的にこれで通用するのですか、と伺ったら、まだ判例は調べてないというお返事にびびってしまったが、今後しっかり論を立ててもらうように期待したいと思った。交流会の模様は、ファイトバックの会でも紹介されています。

一審判決は、館長職を雇い止めされたことの不当性について、「一定程度の更新を想定していた」と次のように述べている。

雇用契約は、一定程度の更新が想定されていたとはいえ、当然に更新されるわけではなく、また、更新されることが法的な権利と構成できるような状態にあったともいえない。

もともと『すてっぷ』の館長としての業務は、被告財団が行う事業の企画・立案及び実施の統括とされており(前提となる事実(2)イ(ア)、ある程度継続性のある事業の企画・立案を統括することが期待され、特に支障がない限り、一定程度の雇用契約の更新が想定されていたということができる。しかし、一方で、『すてっぷ』の性格から、一人の館長が、館長職を長期間独占することを想定しているとも言い難い。『すてっぷ』の館長職は、1年程度で当然交代することは予定されておらず、一定程度の更新を想定していたということができるものの契約の更新が当然であるとか、それが法的な権利として認められていたわけではない。以上によると、特段の事情のない限り、雇用契約に定められた期間が満了すれば、雇用契約関係は終了することとなる。

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