米騒動から90周年記念の劇「浜に立つ女たち」

今年は米騒動から数えて90年にあたる。動きが起きたのは端境期で米が逼迫するちょうど今ごろ。昨日、魚津の「米蔵の会」というNPO(申請中)グループが先頃桂書房から刊行された大成勝代著『浜に立つ女たち』の朗読会を開いた。今朝の北日本新聞に大きな写真付きで掲載されている(写真)。記事をみると魚津で米騒動の女たちのことを掘り起こして、忘れないよう熱心に取り組んでおられる方々のお顔が思い出された。特に、大成さんの強い思いがこういう形で当時の女性たちの思いを再確認させることになっているのだと思う。わたしは所用があり行けなかったのが残念であったが、劇団青年座の岩倉高子さんが思いを込めて朗読されたようだ。この中の「魚津の女性たちのおかげで日本がよくなった」というくだりは、なかなかストレートに言われたことがない一節であり、心に残る。特に、地元ではこういう見方がまったくされていないことをその土地に行って思い知らされたので、余計にこういうメッセージが魚津から発せられたのは意味があると感じるわけだ。

時は巡り、派遣労働や非正規労働に社会のひずみが集約されている感が強い。小林多喜二の『蟹工船』が読まれ、大正デモクラシーに関心が集まっている。同じ時期に「女一揆」と呼ばれ「世直し」を実践していた富山の女たちにスポットが当たるのは当然の流れだろう。どうやって世の中を変えるか、世の中をよくするか、みんなが答えを探していたかの時代、富山の女性たちは生活の中で感じた「おかしい」を拠り所に米屋や町の有力者のところに直訴した。目の前の「おかしい」ことの一つ一つを実際に「おかしい」「変えてくれ」と行動していくことで世の中が変わることを示して見せた。この行動力はいつの時代にも通用することだ。

世の中が変わるとしたら中心ではなく周縁からだ。米騒動の女たちの動きもまさにそのことを示している。こうしたことを思い出させてくれる「米蔵の会」のみなさんにも「世の中をよくしたい」という熱い思いがたぎっているのだと思う。

【追記】このグループが主催された「フォーラム米騒動」の勉強会では私も今年2月に一回、米騒動は「女一揆」とよぶにふさわしい世直し運動だったという話をさせていただいた。それについてはブログで報告している。コメント欄でもいろいろの方から興味深いご意見をいただき私自身、大変勉強になった。世直しと女性の動きに関心をもたれる方は、米騒動話その1ー「主婦」の哀願運動かおよび、米騒動の話その2 「女一揆」と呼ぼう、それに、米騒動の話その3米騒動と「女性運動」をご覧いただければと思います。