映画『日本の青空』への批判

 友人の鈴木明子さんが「映画『日本の青空』を観て――平和憲法の誕生と鈴木安蔵」という自費出版の論文を送ってくださった。簡単に言うと、映画『日本の青空』のもつ現憲法を守ろうという趣旨には賛同しつつも、映画のストーリー展開には違和感を感じるところがあり、実際の憲法制定過程をひもといた論考である。鈴木さんは、「『アメリカの押しつけではない』という主張にとらわれすぎて、歴史を忠実に見据えようという点で損なわれた部分があったのではないか」と歴史の検証を行ったのであった。さすが編集者だけあって、目次がしっかりつけられており、また読者に読ませるつぼを心得ておられるので読みやすい論考となっている。

 ぱらぱらと読ませていただいたところなので、勘違いもあるかと思うが、ざっと述べると、一番のポイントは「映画が(憲法がアメリカからの)「押しつけではない」ということを証明しようとして、歴史の『事実』を微妙に歪曲していることを明らかにしようとしていることにある。「映画全体に流れている一種のナショナリズムのようなものに対する違和感」が大きかったと書いておられる。ネットでちょっと検索してみただけだが、この映画は絶賛されることはあれ、批判は保守派からしかなさそうだ。ネットのカスケード現象は、「ジェンダー」「ジェンダーフリー」論争で、リベラル派のフェミニズムと伝統派の保守勢力を「集団分極化」してしまい、それぞれを過激化していったと思われる。この映画をめぐっても、超絶賛かくさすかどちらかしか見つからないかもしれない。そんな中で丁寧に原典にあたって丁寧に歴史を掘り起こした鈴木明子論文は、異色である。

 歴史をねつ造してまで憲法9条を擁護するというのはやはりとてもまずい。鈴木さんのご主張が広く読まれ、議論されることを願います。読みたいという方があれば、著者の鈴木さんに連絡をとります。