NPOと寄付―「財政民主主義」というカラクリ

 前エントリー「NPOで食えるか?」ワークショップで、書き落としたことがある。それは、当日発言したことで、日本ではNPOに寄付をしたらその分税金の控除が受けられるなど、寄付を盛んにしようという政策がとられていないが、民主党はそうした税制改正を視野に入れている政党だから、市民運動でもそうした税制改正をバックアップしようということだ。当日はそこまではっきりとは言ってなかったかもしれないが、そういう趣旨で発言したのだった。ただ当日発言した時は、裏付け資料を持ち合わせていなかったので、その後調べた。やはり民主党は寄付について税制の改正を主張していた。以下、報告する。参考にしたのは、Our Planetテレビによる民主党と市民活動についての懇談会(7月)の動画配信だ。長時間の懇談会であり、また内容も多岐にわたるので寄付と税制の関係についてを拾うのはちょっと手間がかかるかもしれない。しかし、こちらで、二番手に登場する長妻昭議員が日本の寄付金文化はとても乏しく、その原因として税制の不備があると確かに述べている。以下、要点をかいつまんで書いておく。

 長妻議員は、海外との比較をしてみたのだそうだ。2006年度において、国民一人当たりの寄付金額が、日本 2,034円、米国 84,825円、 英国 33,597円という大きな開きがあると指摘している。だから民主党は、もっと寄付文化が盛んになるように税制を変えてNPOを活性化していきたいと述べていた。

 しかし、そこでネックになるのが財務省なんだそうだ。財務省は、個人の意向でNPOに寄付をしそのお金で公的な業務をNPOが進めることは、「財政民主主義」に反するという主張をしているというのだが、ちょっとへんだ。日本では公の分野に関しては、全部税金という形で一旦国庫に入れて、それを国会議員が分配するという形をとる。財務省は、これを「財政民主主義」と主張しているのだという。もし、税金を控除されるしくみがあれば、国民は今より多く民間のNPOに寄付をすることになるだろう。そうすれば、国の財政として国民に選ばれた国会議員が何にいくら使うということを決めないで、民間のNPOが公的仕事をすることになる。財務省は、これだと財政について民主主義が崩れると考えるのだそうだ。

 しかし、「財政民主主義」という考えでは、公的業務は全部公務員が進めていくことになる。公務員の仕事が生産的であればこの論理も認められようが、公務員にこうも無駄が多い現状が問題になっている現状では、この論理は通用しない。NPOは業務に関して役所の認可を受けかつ役所に詳細な報告義務を持つわけであり、民間で勝手に業務を担っているということにはならない。「財政民主主義」は、公務員の仕事が減っていかないように「省益」を優先する考え方でもある。

 また、現状のように公務員がほぼ全面的に担う状況では日本の財政が立ちゆかないという現状もある。だから民主党は「税金の民営化」をはかっていくと、長妻議員は主張されていた。ちなみに、すでに、寄付文化の革新を実現していきます!、という日本ファンドレイジング協会も設立されるなど動きもあるようだ。

 NPOの活性化には、税制の改正が不可欠である。これまで言われているような公務員改革ということだけではなく、NPO文化を活性化するという点からも民主党の税制改革の取り組みには大いに期待したい。同じく、社民党新党日本NPO法・税制の抜本的改革をマニフェストなどで主張しているようだ。政権交代でこのように市民活動の活性化が進めば、大変うれしいことだ。

 NPOの基盤を強くするためには、自助努力だけでは限界がある。寄付文化が根付くように、今後の税制改正の中身に注目したい。