諸橋泰樹著『メディアリテラシーとジェンダー』(現代書館)の書評

 諸橋泰樹著『メディアリテラシージェンダー』(現代書館)の書評を書かせていただきました。「オーディエンスの能動性は何処へ? 『メディアと性差別』の流れを背景にした議論」ということで『図書新聞』今週号に掲載されました。

 本書は、フェミニスト・メディア運動&研究の流れを背景にした「メディアリテラシー」の指南書と目される著書です。著者の諸橋氏はこの分野では講演に著作にと活躍しておられることはよく知られています。本書も『朝日新聞』書評のほか、毎日新聞などで絶賛書評が相次いでいると版元のサイトに書かれていました。

 そんな絶賛書評ばかりでだれも表だった批判がないという中、ささやかながら素朴な疑問を書いてみました。あちこちで批判ばかりしているようで恐縮なんですが、なんせ「うるさかろうが煙たかろうが、正義の道を行く」(『ドラマ斉藤さん』の観月ありさのキャッチフレーズ)斉藤さん、なのですから、やむを得ないでしょ。

 何を書いたかというと、本書では女性週刊誌は芸能人や皇室、事件ネタにより読者の目を差別や格差からそらすなど「女性を思考停止」させるなどオーディエンスに能動性がないかのような記述が多く、既存の文化をどうやって変容させていくか、という側面が浮かび上がってこないことにもどかしさを感じたこと、そしてフェミニスト運動や研究の立場からする「メディアリテラシー」であれば、能動的、創造的な「読み書き」へのクローズアップをこそ期待したいということなどです。
 また、これだけインターネットツールがありふれている中、単に雑誌や新聞を「ジェンダー視点から読み解く」だけの展開では物足りないと思ったので、そうした点について書いたものです。興味のある方は、お近くの図書館でご覧いただければと思います。