遅まきながら、フェミニズムとインターネット問題を考えるサイトの趣

先頃、 フェミニズムとインターネット問題を考える サイトを有志でつくり、公開した。

フェミニズム運動は、1995年の北京女性会議に際してインターネットの威力を知ったと思う。メールやHPを活用して北京会議で話し合われたことをさくさくと発信できることに気付いた。このように最初の取り組みは、ほんとに早かったのだが、その後はJJネットというFAX通信が活用されたり、さまざまなMLが作られたりといった具合が長くつづいた。そして、現在はというと、ネット活用は、決してうまくいっているとは言い難い状況にあると思う。

わたしの回りをみても、情報交換にはもっぱらメールやメーリングリストを頼り、ブログ、mixitwitter,facebook,といったSNSの活用は、遠ざけている人がほとんどといった感じがする。まあ、ぶっちゃけ、インターネットの便利なツールがあるのに、効果的に利用できていないのはもったいないなあという感じがしている(自分自身がうまく使えているとは決して思ってはいないのだが、使おうともしない、興味も持たないという人が多いのは、ちょっと理解しがたいのである)

数少ない活用の中でも、ウェブ発信の作業が、特定の「ネットに強い人(若い人?)」の負担となって過重な労働を招いて却って運動から離れてしまうという問題もあった。さらに、ネット発信の中で、ネット発信について一部の人にお任せで、不適切な発信をしたり、それが人権侵害を引き起こしたりしたこともあった。そして、ネット上のことなので、それが他のブログや掲示板にリンクされたりして大きな波紋を起こしたりしていることにうとく、理解もできず、放置して問題が拡大してしまうなど、ネット発信特有の課題も孕むので、問題は複雑である。「ネットはわかる人にお任せ」といって済む問題ではなくなっている。

そこで、「館長雇い止め・バックラッシュ裁判」の支援団体である館長雇い止め・バックラッシュ裁判を支援する会(略称:ファイトバックの会)で起きた事例を振り返る研究会を、関わった現・元会員の有志で、2008〜9年に東京や関西で連続4回開催した。サイトでは、会のホームページ、ブログ、MLなどのネットメディア、およびチラシや会員ニュースレターなどの紙媒体も含め、詳細かつ総合的に分析し、関わった者たちで議論を行った。上のサイトは、その研究会の成果をまとめたものである。

研究会から2年がたち、裁判の方も2011年1月に最高裁にて高裁判決が確定し、終了したし、支援の会であるファイトバックの会も7月末で解散された。そんな現在、改めて、今の状況や視点から再度当時の発表内容を振り返り、サイト用の原稿をつくり、それをまた議論して今回サイトとして公開することになった。

わたしたちとしては、ファイトバックの会のネット発信を検証したのであるが、それは(もう解散されている)この会を批判するためではなく、フェミニズム市民運動団体がインターネットを活用する際、同じ間違いを繰り返さず、より効果的に発信でき、かつ人権侵害をひきおこさない方向性をめざそうという思いからであった。この趣旨はどれだけ強調しても足りないくらいだと思っている。こうしたテーマについて、今後とも議論をしていかれたらと思っている。

内容についても紹介したいと思っているが、まずはこのようなサイトを作った趣旨の紹介をしておきたいと思う。それと、ネットでの発信は、いろんなツールがこれほど出てきているんだし、失敗しながらでも、やってみるしかないと思っている。逆説的かもしれないが、そういうメッセージもこのサイトには込めているとわたしは思っている。

このサイトについての記事としては、山口智美さんがすでに、フェミニストの論考で書かれているのでご参照ください。フェミニズムの世代間の権力関係についてなど、興味深い記事についてはまた論評するかもしれません。