「性的指向」を明文化した条例が制定されていた!
新しい年、最初の記事です。今年もよろしくお願いします。
昨年12月、関西学院大での『社会運動の戸惑い』読書会に参加したおかげで、「性的指向」を明文化した男女平等参画条例が泉南市で制定されていることがわかりました。金明秀さん、山田真裕さん、先端研のみなさま、ご参加くださった方、大変お世話になりました。さらに、その後のツイート情報でわかったのは、性的少数者の人権を擁護する条令が泉南市以外の市町村にも複数、制定、施行されていたことでした。
都城市男女共同参画条例については、2006年に再制定される際に、「性的指向」にかかわらず人権が擁護される、と「性的指向」の文言が外された、その経緯やそれがどうして起きたのかについて、4章「性的指向をめぐって」で詳しく述べています。しかしながら、その後、新たに「性的指向」を入れ込んだ条例が策定されていたことは、不勉強で知りませんでした。
社会運動の戸惑い: フェミニズムの「失われた時代」と草の根保守運動
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大阪府泉南市泉南市男女平等参画推進条例では「男女が直接的又は間接的に性別及び性的指向による差別的取扱いを受けないこと、男女が個人として能力を発揮する機会が確保されることその他男女の人権が尊重されること。」ということを謳っています。この「平等参画」条例は、2011年12月に公布、12年4月から施行されています。
この情報は、読書会に参加くださっていた泉南市の@kuko_stratosさんが教えてくださいました。都城で削除されたことをご存じで、それを泉南市で明文化されたたようです*1。
こうした新たな状況を私がツイートしたのをご覧になった@three_sparrows さんが、「性的指向」に言及した条例は、少なくとも二つの市町村で制定されていることを速攻で教えてくださいました。
鳥取県琴浦町の男女共同参画推進条例は、基本理念に「男女の性別又は性的指向にかかわらず、すべての人の、人権が尊重されること。」とあります。2006年9月公布、施行です。ちなみに、鳥取県は町レベルでも、条例をつくっている自治体が多いようです。
沖縄県西原町の西原町男女共同参画条例では、「その他ハラスメント」の定義において「性的指向」に言及し、そうした「他人の人権を侵害するいかなる行為もしてはならない」と明記しています。こちらは、2012年3月公布、4月施行です。
都城市も、決して都市圏ではない地方の一都市でしたが、今回「性的指向」に触れていることが判明した鳥取県琴浦町と沖縄県西原町は、どちらも市よりも小さな単位である地方の町であることに驚きます。また、昨年4月施行の泉南市サイドが他の二つの町の条例をご存じなかったようであり、特段のつながりや連関はなく行われていた模様です。
それと同時に、自分が知らなかったことを棚に上げてで恐縮ですが、一時はあれほど盛り上がった条例制定運動や、その中でも論争された議題の一つである性的少数者の権利問題だが、表立っての議論が見えなくなったところで一部の自治体で静かに条例に書き込まれていることは、どこまで知られているのだろうか、とも思いました。私を含めて、小さな町のことに関心を払っている人はどれだけいるのだろうか、ということでもあります。
というわけで、都城市条例に一旦は入ったけれども消えた「性的指向」という文言。これが、いくつかの市町村で静かに甦っていることをお知らせします。やはり、一度しっかりとした取り組みをしておけば、きっとその足跡はどこかに残り、生き続けるものなんですね。一度付けた足跡は残る、ということがわかり、とてもうれしくなりました。そして、これが単に書き込まれ、「見える化」するだけでなく、実質的な政策を伴い、少しでも性的少数者の課題解決に向かっていくような動きにつながればと思います。
*1:ちなみに、泉南市は、就労に関してもかなり詳細な実態調査を行われています。啓発事業だけではなく、施策として取り組むためにはこういった実態調査が不可欠なことだと思います。