朝日新聞の第三者委員会報告から欠落している「女性の人権」
一度ツイートしたことを羅列したにすぎませんが、朝日の第三者委員会報告をぱらぱら見ていて思ったことを書き留めておきます(リンクだけつけました)。
10月9日に「「「朝日新聞の慰安婦報道について検証する第三者委員会」についての研究者・弁護士の要望書 」(呼びかけ人・林博史氏ら)が出された。それは、軍の管理下で女性たちが深刻な人権侵害を受けたことが問題であるという考えに立っていた。
そして以下のことを第三者委員会に要望した。第一に、この問題の専門家がいないこと、第二に、国際人権に関わってきた法律家や人権NGOの方々が入ってないこと、第三に女性が委員の中で1人しかいないこと、等を改善するようにというものだった。
この度発表された朝日新聞の第三者委員会報告では、「女性の人権問題」として論じられていないと、唯一の女性委員である林香里氏が述べている。今回の報告にある参考資料リストにもヒアリングリストをみても、国内の女性専門家・関係者およびその書物は入っていない(アジア女性基金関係除く)。
また、林委員も述べているが、委員会に「女性の人権問題」として「慰安婦」問題を研究している研究者がまったく入ってない。参考資料リストを見ても、女性の人権問題という視点が入ってないことが歴然としている。
ヒアリングにも、参考資料リストにも、国内の女性研究者や運動家が取り上げられないのは、偏っている。さらに、アジア女性基金に関しての資料・文献は同基金推進側のものに一方的に偏っており、それを批判している被害者支援団体や研究者のものは入っていない。偏った報告だと言わざるを得ない。
同報告では、「女性の尊厳や人権という立場に過剰に寄り添うことによって、現実的な解決策を遠ざけている印象は拭えない」(岡本・北岡委員)とまとめている。これは「女性の人権問題」だと、問題解決しないと言っているかのようだ。
現実的な解決とは、被害にあった女性たちの尊厳や人権が回復するということなのではないか。この報告書を読む限り、第三者委員会は、単なる外交問題とか国益とかいった抽象的な次元でのみとらえられている感が拭えなかった。これは当事者を置き去りにした議論であり、むしろ解決は遠のくと思う。
岡本・北岡委員は、朝日新聞が「女性国際戦犯法廷」に肩入れしていると批判する一方、「アジア女性基金」については、「責任回避の方策」と批判的にみているとして非難する。女性たちが被害者に寄り添い行った女性戦犯法廷をけなし、アジア女性基金を肯定する路線は、まさしく「女性の人権」否定だ。
結局のところ、私も賛同人に名を連ねた「朝日新聞の慰安婦報道について検証する第三者委員会」についての研究者・弁護士の要望書」(林博史氏ら呼びかけ人、10月9日)の要望は一顧だにされなかったに等しいことが判明したのである。黙っていてはいけないと思う。
また報告書を読み直した後に、ちゃんとしたコメントをまとめられたらと思っています。