女性議員が増えた長野の秘密

長野県では今回の選挙で11人の女性が県議会議員に当選した。長野県議会は定数58名だから19.0%、女性は約2割を占める。すごいことだ。その高い女性の政治参画の秘密を三井マリ子さんが暴いている。女性議員率日本一、長野の秘密

女性議員の割合が日本一高くなったのは長野県で、19.0%。それは「女性議員を増やすネットワーク『しなの』」の長年の運動の成果だった。長野県議会の定数は58で、15人の女性が挑戦した。結果、現職7、元職1、新人3の計11人が当選した。改選前は8人だった。

 女性県議の躍進を促した「女性議員を増やすネットワーク『しなの』」、略して「ネットワークしなの」は、1996年創立された市民組織だ。目的はひとつ、女性議員を増やすこと。会長は下諏訪町議を4期務めた樽川通子さん(77歳)だった。組織は会員800人にまで成長したが、昨年、10年の節目迎えて解散してしまった。

樽川さんは、やはり、眠ってはいなかった。地域に密着した新しい運動の拠点として、だれもが気軽に集える場所『サロンしもすわ』を4月15日にオープンさせるべく、準備中だった。JR下諏訪駅にほど近い古びた空き店舗を安く借りて改装し、昼間は軽食堂兼お惣菜屋、夜は居酒屋となる。しかし、2階には大きな和室もあって、誰もが気軽に集まれる場所にするという。店を守るのは、主に「ネットワークしなの」の残党の女性たちで、手弁当ないし準・手弁当で働くことになる。こうして、多少とも利潤のあがる店にして、改装費用の償却も目論んでいる。

 樽川さんは言う。「女性議員率日本一にすることができました。やっとです。ここまでには、10年間の『ネットワークしなの』の運動、いや、その前からの運動があったからです」。女性県議当選者11人中9人までが、「ネットワークしなの」の会員だった。

樽川さんは「もう学習の時ではない。行動の時だ」、と考えた。女性議員を増やし、長野県選出の女性国会議員を出し、長野から初の女性首相を出す……そのためには、女性たちが実践力をつける組織が必要、と仲間を叱咤激励した。

 具体的には、(1)選挙体験者による選挙ノウハウを提供する(2)候補者を擁立支援する(3)選挙を支援する(4)政治について学習する(5)「女性と政治キャンペーン」を張る(6)情報誌を発行する、などの行動にうってでた。

 こうした運動の成果は目に見えて現れた。1999年の統一地方選挙で、女性の県議が2人から4人に増えた。女性の市町村議員が29人増の79人当選した。さらに4年後の2003年の統一地方選挙では、県議が8人、市町村議員は186人に増えた。

 日本一の長野に到るまでには、日本一の女衆の運動があったのだ。

 女性を議会に送り出せた長野の秘密とは・・・議員経験者がメンターとなって後継者づくりに励んだということに尽きると思います。樽川さんは、現在、政治を語る場をつくっておられるようですが、そこで第二の樽川さんが生まれてくるのを待っておられるような気がします。

 この「秘密」は、選挙や政治の世界のことだけはなく、少数者が雇用の場などであらゆる場に参入する際の「秘訣」です。