福光と棟方志功

今日は、南砺市福光に、棟方志功ゆかりの愛染苑(あいぜんえん。棟方志功記念館)と志功の住まいだった鯉雨画斎(りうがさい)、それに青花堂(しょうげどう)を訪ねた(写真は青花堂の入り口)。前に訪ねたら休館日で、整理に来ておられた河南洋美さんからぜひ日を改めていらしてくださいと言われていたのだが、今日行って正解だった。ここは美術館なのに、フツーの美術館らしくないところがすてきだ。なんと利用者に、お正月だからと新年のくじ引きでもてなしてくださるのだが、最後の一枚が残っていた。しかも、残りの一枚がなんとトップ賞であった。トップ賞は、木彫りにカラフルな絵付けをした福光天神様(菅原道真)であった(写真がないのが残念・・)。


ここの美術館はほんと手作り感にあふれ、館内にも自然な感じの枝振りもすばらしい花や木がたわわにいけてある(写真にもみえます)。棟方の画風に合っている。いけられるのは草月流成瀬有紀さんとその社中ということだ。しかも、聞けば、大きな赤い実をふりふりにつけた南天は近所の方が毎年決まって持ってきてくださる物であり、また花芽をいっぱいつけた老梅の枝もこれまたどなかたのお宅からの頂き物というではないか。町中の方がこの美術館を愛して、大事に大事にしておられることが伝わってきた。


館の中には、わたしが中学時代に体育館だかに飾られていた四天雄飛の図など大作から小品まで豊富で見飽きることがなかった。説明の河南さんが、スイスのルガノ国際版画展で優秀賞をとった女人観世音板画巻の初版は、字を間違えたまま刷ったものだとかいろいろとエピソードを語ってくださったのでよりいっそう興味をもって聞くことができた。


それと青花堂という民芸館にも行った。ここは石崎俊彦さんという棟方を支えた福光人の住まいであるが、わたしには父の従兄弟ということを聞いていたので、実際のつきあいはないものの興味をもって見ることになった。石崎さんについては、棟方画伯と石崎俊彦 に詳しい。独身だった石崎さんの最期を看取ってくださったのも愛染苑を支えてこられた河南さんたちだったと聞いた。これを聞いて、いっしょに行った父は大変心苦しく思っていたようだった。だが、季節ごとにいらしてくださいと言ってくださり、また再訪を約束して帰路についた。


富山に疎開していた当時は、棟方も、まだ世界のムナカタになっていなかった頃だから、必ずしも町の人に愛されていたとはいえなかっただろうし、子どもさんたちはいじめられたりして今でも福光にいい印象がないということも聞いた。しかし現在の福光の人たちは、そうした過去をつぐなうかのごとく、記念館を自然な草木や花枝で生命力をみなぎらせ、また数限りないエピソードを語りその人となりを伝えようとするなど、棟方を大事に大事に遇しているようにわたしには思えた。また、3館の入館料があわせて300円という額に(あれだけの収蔵品にしてはあまりにリーズナブルすぎる)、棟方を決して商業的に利用しているのではありませんよ、と言っているような気がした。

富山の片田舎にひっそりとすばらしいアートが息づいていること、それを日夜支えているひとたちに出会えてほっこりとする思いがした。富山にいらっしゃる方には是非訪ねていただきたいオススメスポットです。