荻上チキさん富山集会の報告 

10月18日富山市のオークスカナルパークホテル檜の間で開催された荻上チキさん<<大人から始めるインターネット>>のご報告をしておきます。チキさんは冒頭から「だらだらやりましょう」「そこわからないとつっこんでください」と言われたりもしたので、質問をしつつ説明をしながらの和やかな集会となりました。参加者は、女性会議から移動してこられた方が半分以上でしたが、このためだけに来られた地元の方もありました。県外の方は、枚方市から、広島からの参加がありました。


チキさんのお話と参加者からの質問やコメントについて、半々づつとしました。チキさんとわたしの掛け合いで進めましたが、一番前に座っていた知人の女性が「今日はあやしい。若いツバメ?・・・」とわたしに向かってからかわれたので、大笑いしながら始まりました。


荻上チキさんが話されたことはおおまかに以下のことでした。ケータイやネットというメディアは「この社会のあらゆる人やものをつなげる道具」。だれもがネットにつながるゆえに「子ども」にもつながる。すべてにつながるということで予期せぬリスクが生じる。犯罪やメッセージが誤配されることもつながる。しかしながら、ケータイインターネットの利用率は、6-12歳で急増中。年長者はアドバイス出来ない。教育が成立しない中で利用が進んでいる。とりわけ子どもが先に進んでいる状態であることにこの問題の難しさがある。特に、ネットは闇社会などとそれに触れていない人ほど「ネットはこわい」とみなしがちである。メディアの影響は、自分よりも他者の方に大きいとみなす「第三者効果」により、必要以上に規制を主張するような動きも懸念される。福田元首相が、ネットいじめを防止するために、ケータイを使わせないと言ったことがあったが、一種必要な道具となっていることを無視した発言であった。


解決策としては、一般的には、1)問題の正しい所在を知り、2)有効な対策を考え、3)可能な形で実行する、4)新たな問題を発見する、というプロセスを繰り返しつつ、上手な使い方を共有するしかないというお話でした。特に、「ウエブ・トラブル」の解決は、2つの軸で考えるとよい。一つはトラブルが、オフラインに起因するものか、オンラインに起因するものかという軸。もう一つは、トラブルがコンテンツにまつわるものか、人間関係にまつわるものかという軸で考えることだ。この2つの軸で交差させると、「A群:オフラインで人間関係によるトラブル・・ネットいじめ、学校勝手サイトの裏化」、「B群:オンラインで人間関係によるトラブル・・・炎上、荒らし、個人情報さらし、成りすまし、出会い系サイト利用、オークション詐欺」、「C群:オンラインに起因してコンテンツによるトラブル・・架空請求スパムメールワンクリック詐欺フィッシング詐欺、アダルトサイト閲覧、チェーンメール」、「D群:オフラインに起因してコンテンツによるトラブル・・不正アクセス、違法アップロード、パケット死、データ流出、プロフ流出」(新たに当日使われていたスライドの図を入れましたので、ご参照ください)


その後で具体的な事例の紹介を主にB群を中心に話されました。ネット炎上、なりすましなどの具体例を示していかれました。チェーンメールや、ネットいじめについても。幸い、Lanがすいすい使える会場だったので、ストレスなくネットアクセスしながらのお話はいいですね。効果的だと思いました。参加者は、チキさんのお話の途中でも、わからないところで質問が続々出ました。そのたびに、チキさんは速攻でネットにつなぎ、2ちゃんねる学校裏サイト化している掲示板をみせたり、2ちゃんの「名無しさん」が同一人物ではないこと、IDをみればそれがわかることなどについて説明したりされました。また、学校裏サイトを子どもがどうして作れるのか、といった運営についても質問が及びました。B群についての質問が少なかったのは、実際にネットを活用している方が少なかったからなのかと思わされました。いずれにしろ、みなさん、日頃疑問に思っていたことを目の前で確認できてとても感慨深げでした。学校裏サイトには関心が高かったです。おそらく、こうした疑問について日頃<大人>が学ぶ機会は少ないんだろうな、それに一人一人の知識や疑問がまちまちなので、学習の場をつくること自体が難しいのだろうなと思わされました。よって放置されている領域だと思わされました。


実際にお子さんのネット接続で問題を抱えている方からは、どうしたらいいかという相談がありました。また、ある時ネットをみたら、スパイシーというサイトで写真からお知り合いから全部紹介されていたが、どうやって消したらいいかという相談もありました。その他、右派のメディアに書かれた記事についての相談もありましたが、言論に対しては言論で対抗するのがいいという結論でした。スパムメールがなぜ来るか、どう対処したらいいかという質問もあり、gmailなどプロバイダーがそれにかなり対応しているという説明もされました。チキさんがいろいろ問題が起きた時には、それについてネットでまず検索することが大事と言われました。トリビアの泉についてのチェーンメールが来たら、それを検索すれば、トリビアの泉のHPでそうしたメールは出していませんというお知らせが載っていて、それがデマだということを理解できるといったように。それに対して、検索はグーグルがいいのか、ヤフーがいいのか、という質問も出ました。チキさんは、グーグルはロボット型検索、ヤフーはディレクトリー検索で、手作業型だと説明されました。


参加された中には80代でインターネットを一度もしたことがないけど、インターネットそのものに関心があるという女性もおられました。そしてコメントを他人が書き込むことができるとはいったいどういうことか、という質問をされてました。とりあえず、思いつくこととメモから書き出してみました。不正確なところや書き足すことが出てきたらまた改めて書きたいと思います。


終わってからの感想としては、チキさんの「説明が明快であった」、「チキさんのお話、澱みなくテンポがあって、独特の説得力がありました」、「チキさんの話しはとてもわかりやすく、無知なこちらのサイドに降りてきてお話ししてくださったので、分かりやすかった」がありました。その他、「内容は、暗いとか辛いような事だったが、解決策があるとこまでお聞きできた事(現実は、解決しようと思うといろいろ大変のでしょうが)が、よかった」や「苦手な分野だったので とても有意義だった」という声が聞かれました。なお、チキさんは、話しの途中で、「早すぎるので、NHKのアナウンサーとは言わないけど、民放のアナウンサーくらいのスピードまでスピードを下げてほしい」と聞き手から要請されてました(笑)。この要望の仕方の具体性はなかなかだと思いました。


特に、子どものネット問題を抱えている方からは、「内容が大きなくくりだったために、求めていた子どもをとりまくネットと携帯の環境についてばかりの話ではありませんでしたが、それでも、とても参考になるお話が多かったです。知らない用語や、おきてる事実を知ることができ、常々「まずは知ることから!」をモットーとしている私にとって実り多い2時間でした」や、「やはりネットや携帯も家庭環境、親子関係、それと、家庭内での教育(人間的な部分の)が基盤であるのだなと思います。だからやはり、教育相談とか、そういう施設を訪ねて相談してみたり今後していこうと思います」というご報告をいただきました。


これらの反応からは、この集会を企画したことの一定の目的は達することができたように思いました。しかしながら、「インターネットやケイタイは日本女性会議に来るような人にはなじみが薄いのかもしれない。きっとネットのことは、何かよくわからなかったのだろう」という声があったことからみても、また、ネット界では男女共同参画についてのインタラクティブな発信が少ないこと、フェミニズムは批判してもかまわないというネットの空気などを思うと、もっともっとネットについて話す場が必要だと痛切に感じ取る場となりました。日本女性会議では情報やネットについての分科会がなかったことからみても、男女共同参画政策やフェミニズム女性学とネット文化の間にあるふか〜い溝というか河を再確認する機会となりました。このような貴重な場をもてたことをサントリー文化財団に感謝しつつ、次なる場はどういう形でもてばいいのかと考えさせられました。

いずれにしろ、ご参加くださったみなさま、集会の運営にご協力くださった方、お手伝いくださったオークスカナルパークホテルのスタッフのかた、それに遠路富山まで足を運ばれたチキさん、どうもありがとうございました。

なお、日本女性会議に参加したので、それについても追って何か書きたいと思います。