ピンク映画と県民栄誉賞と
富山王国さんが、滝田洋二郎監督がピンク映画で活躍されていたことを「すばらしい業績」とたたえている。わたしもほぼ同感で、酸いも甘いも噛み分け、人情の機微もわかる幅のある人だからこそアカデミー賞委員をもうならせる作品ができたんだろうから、ピンク映画の経験は滝田監督にとってきっとプラスだったんだろうと思う。滝田監督の日活映画には、この記事を読むと、竹中直人まで出演している。現在のパートナーの千多枝さんは滝田監督「はみ出しスクール水着」の女優だったというし、いったいどんな作品なのかみてみたくなったぞ。
おくりびと・滝田監督
★県民栄誉賞
検討委員会が満場一致。
滝田監督はピンク映画の監督で有名。
パートナーの千多枝さんは、滝田監督「はみ出しスクール水着」の女優。
ひとつでも欠点がある人間は生きにくい富山。
若者が愛想を尽かしてそんな富山から出て行く。
滝田監督の受賞が、そんな富山じゃない!というメッセージなら、
それこそ素晴らしい判断をしてくれた検討委員会やちゃ。
そして「富山王国」さんはさらに、ピンク映画を長年作ってこられた滝田洋二郎監督のことを認めて「県民栄誉賞」に決めた検討委員の方々を、ちょっとシニカルではあるが絶賛しているのだ。ノーベル賞の田中耕一さんが「名誉県民」に決めた際に同時に創設したという「県民栄誉賞」を滝田洋二郎監督に出したのだ(この2つの賞についてはここで議論されています)。いずれにしろ、「マジメで融通が利かない」という富山県人イメージを打ち壊してくれた功績は大きいということは確かだとわたしも思う。
以下は毎日記事から。
県民栄誉賞:初の授与「滝田監督」満場一致で 「おくりびと」でアカデミー賞 /富山
県民栄誉賞を贈られることが3日、決まった映画「おくりびと」の滝田洋二郎監督。米アカデミー賞外国語映画賞を日本映画で初めて受賞した作品を生み出した滝田監督は旧福岡町(現・高岡市)出身で、県によると、授賞の意向を伝えられ、「大変うれしい」と喜んでいたという。02年の賞創設以来、初の受賞者が誕生する。
同日、有識者による検討委員会(座長=新木富士雄・北陸経済連合会会長)が、満場一致で、「県民栄誉賞にふさわしい」との意見をまとめた。これを受け、県も、「世界的に権威ある各賞を受けて日本全国の若者に夢と希望を与え、富山の名も高めた」として授賞を決めた。
そういえば、ピンク映画の監督であることは、富山県民栄誉賞の授与を伝える報道ではいっさい出てこない。アカデミー賞受賞の際にも一般紙は触れなかったか、目立たないように扱っていた。その扱いからすれば、ピンク映画がなんか正々堂々と紹介できない「日陰モノ」というか「悪いもの」とされていることを表しているようだ。(ちなみに、『百合祭』『尾崎翠を探して』『こおろぎ嬢』などの浜野佐知監督もピンク映画の監督から始めている。後に、旦々舎をつくり自主制作の作品を作り続けている)
それからすれば、むしろ満場一致で「県民栄誉賞にふさわしい」との意見をまとめた有識者による検討委員会(座長=新木富士雄・北陸経済連合会会長)の懐の広さは誉められるのではなかろうか。どうせ報道されていないから、だれも知らなかったことにして決めましたっていうのは、なしですよ。