桑名市の「男女平等をすすめる条例」は廃止されていない

  • 3月17日の当ブログにコメントいただいた桑名市条例について、読みづらいので新たに項を立て直して書きます。

17日のところでいただいたコメントから引用します。
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みどり 『バックラッシュについて、『We』2.3月号の橋本ヒロ子さんの「桑名市の男女平等条例は廃止された」は、間違いです。とりあえずブログに書いておきましたのでお読みください。』 (2005/03/18 08:55)

以下、みどりさんのブログ引用。〜〜〜〜〜
どっこい条例は生きている。
活動 / 2005年03月17日 23時57分10秒
橋本ヒロ子さんの文章を読んでおどろいた。
桑名市の「男女平等条例が廃止された(されようとしている)」という2カ所は、あきらかに間違い。
自治体の法である「条例」は、「廃止条例」の議決がない限り、そんなに簡単に廃止できるものではない。
桑名市の男女平等を推進する条例は、12月の市町村合併により、上程が遅れてはいるが、「廃止」されてはいない。バックラッシュ派も、「失効した」とは言いふらしているが、「廃止」とは言っていない。
まさに、バックラッシュによって市長が条例を出ししぶっている、という状況だが、合併協議でも合意事項となっているので、手続き的には、当然、新市に引き継ぐべき条例である。
男女平等条例を擁護するはずの立場の人たちに、簡単に死んだことに(廃止)されてしまっては、たまらない。「事実誤認」により、バックラッシュ派に力を与え、現場はますます見捨てられてしまう。
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#斉藤『お知らせありがとうございました。私も『We』読んで、桑名市条例、もうダメになったのだと勘違いしていました。橋本さん、廃止させたかったわけじゃないだろうに、よく知らないで事実誤認を書かれたのですね。これは存続をかけて闘っている桑名市民にはショックです。橋本さんの記事が結果的に男女平等条例を廃止させたがっている「敵を利する」ことになっていますからねえ。どうしたらいい結果につなげられるのだろうか?桑名市は市民参画で進めた条例であり、平易なことばを使っているいい条例なのでなんとかしたいですね。
別の次元のことですが、これで、「敵を利することは書くな」という『ジェンダーフリー」擁護派の主張が意味をなさないことは、橋本さんがはっきり示してくれました。』 (2005/03/18 11:52)

# ともみ 『これはかなり重大なミスですね。Weは、私の原稿はとてもとても細かいチェックをいれていたのになあ。学者はリサーチするのが仕事なので、こういう事実関係を外すのは学問的にもマズいし、政治的影響も深刻だと思います。地元からの発信ではなく、東京中心の、中央集権型女性学の弊害か?斉藤さん、どう思われますか?』 (2005/03/18 15:55)

#斉藤『改めて『We』2・3月号の橋本さんの「ジェンダーフリーという言葉の問題ではなく」を読みました。これは、山口さんの記事(および上野インタビュー)への反論として書かれた原稿ですね。橋本さんは山口さんと上野さんは「共に、一部事実誤認を元に議論されているため、現在一生懸命運動をしている人たちの意欲をそぎ、反対派によい攻撃材料を与える内容ではないか」と書かれている。今度はそっくりこのことばを橋本さんにお返ししなくてはならない。しかも橋本さんのおっしゃったことのほうが「事実誤認」度も「一生懸命運動している人たちの意欲をそぐ」度合いもずっと大きいと思う。
そうですね、条例制定運動については、発信元はいつも橋本さんら「中央」におられる学者さんでした。そういう情報環境にあったので橋本さんも全国の運動状況を把握しているという誤解があったのかも。』 (2005/03/18 16:53)

# ともみ 『「一生懸命運動している人たちの意欲をそぐ」という論も、上に立った、啓蒙的発想ではないのかな。橋本さんの経歴的にも、今まで書かれてきたものからしても、行政に非常に近い方ですよね。
興味深いのは、「反対派によい攻撃材料を与える・・」という反論を、「ジェンダーフリーを使っていない」と言いつつ擁護している人たちからよく聞くのですが、反対派には私の主張などは単に無視されているようで、攻撃材料を与えた形跡はないのですよね。』 (2005/03/19 00:39)

  • ここまでが前日のブログ議論でした。この後山口とみさんのブログでは、ジェンダーフリー論争での批判のパターンがいつも、事がどう転んでも、自分だけは悪くない、批判するあんたのせいよ的なパターンであることを書かれていますのでご覧下さい。
  • 2002年秋、「あぶないジェンダーフリー」などという批判に対し、「ジェンダーフリー」を守ろうというフェミニズムのうねりが起きた際、一体何を守るのかわからず、「条例で実現すべきは『ジェンダーフリー』という理念を書き込むことではなく、『性差別を解消する』ための積極的是正策の導入である。」(『ふぇみん』2002年11月15日)と書いたことがあります(今になって批判するとは、と言われれていますが、2002年にも批判していたのでしたがあの時は無視されました)。
  • その頃だったと思いますが、桑名市の条例案をネットで入手した時、「です、ます」で行政用語的ではないものができたことに軽いショックを感じたのを覚えています。「ジェンダーフリー」と「メディア・リテラシー」を条例案に入れておられるのには、これが広く市民に理解されるのかなあという感じも持ちましたが、市民が相当積極的に介入したからこそできたものと強い印象を持ちました。
  • その後、どういう展開を経ているのかについては、つぶそうとする側から出た情報ばかりが多くって、条例を作られた側からの情報が入ってきません。それなので橋本さんがWeに書かれた「三重県桑名市の条例は、市民提案で内容がとてもいい条例ですが廃止されようとしているという話もありますし」(p13-14)、および「三重県桑名市のように市民が主体的に提案して制定された男女平等条例が廃止されたり」(p60)という情報が一人歩きしていく危険性は大きいと思います。
  • そこで桑名市議会の会議録を閲覧してみました。2004年9月議会で、成田正人議員が合併と同時に失効させる決議案をだされ、小川満美議員が次のように述べておられます。

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 小川満美議員「この桑名市の男女平等をすすめるための条例は、市民参加でつくられた条例です。市長のリーダーシップによって、桑名市の基本姿勢である市民との協働によってまさにつくられたものであります。市民がつくったから未熟であるという理由で失効を求めるというのは、市民との協働を否定するものであります。桑名市の男女平等をすすめるための条例は、平成14年3月に全会一致をもって可決された条例です。この条例がふぐあいなところがあるというのであれば、議会の中で特別委員会を設けるなりして十分議員同士で議論を重ね、よりよいものにして、改正案として上程すべきだと思います。そういった手続もなしに、ただ、市民がつくって、用語の不適切な部分がある、条文としての未熟な部分があるという指摘だけでは、この議会の議決も軽んじているとしか言いようがありません。
 また、一たん議決をもって成立した条例が合併がなければそのまま、議会の改廃手続がなければ失効するということもありません。そういう重い条例を、明確な理由もなく、どこが悪いのか、どこをどう改正すべきなのか明示もされずに、ただ失効を求めるというのでは理由としては不十分だと思います。よって、桑名市の男女平等をすすめるための条例の失効を求める決議に対しては反対します。」
 

  • 議会録を他にもみましたが、合併がらみで失効して、新たに審議会で検討する予定にあるということなのかなと思います。
  • いずれにしろ、橋本ヒロ子さんが書かれたような状況、つまり「条例が廃止されようとしているのでも、廃止された」わけでもないようです。