今朝のとんでも記事
今朝の北日本新聞に「日本の介護力世界最低に」http://www.kitanippon.co.jp/contents/kyodonews/20061016/16559.htmlという報道が載っていた。2面にも関連記事が載るほどの大きな扱いだ。
家庭で中年女性が家族介護にあたるケースが多いことを勘案して、65−84歳の総人口を100とした場合の40−59歳の女性の人口の割合を「家族介護力」として示した。
要するに、人口が減るから介護力が世界最低になるという話しらしいが、なぜ「女性の人口の割合を「家族介護力」」と単純に決めるのだろうか。家族だけでは介護できないから社会に介護をひらいたのではなかったのか。
同研究所の小川直宏次長(経済学部教授)は「今後、女性の就業率が高まると同時に、介護の主な担い手となっている専業主婦が少なくなる。家族介護に対する価値観の変化も予想されるため、介護環境はさらに厳しくなるのは確実」とみている。
とまあ、所長さんのコメントも「専業主婦が介護をするもの」と決めつけている。日大の人口研究所のサイトも覗いたが、男性研究者の名前しかみあたらないようだった。http://www.nihon-u.ac.jp/indexs.shtml
どうしてこれだけ時代錯誤な研究発表を表まで添えて一面記事にするのだろうか。2面の関連記事には以下のようにある。
介護保険制度ではホームヘルパーなどを派遣してもらえるが、主婦パートが主体のヘルパーも都市部では既に確保が難しくなっている。
ヘルパーも安価な「主婦パート」でまかなおう、ということのようだ。無償か安価かと介護は徹底的に安上がりで押さえたいという意気込みが見え隠れする。ますますとんでも記事だ。
こういう考えがあるから、せっかく意欲をもった若い男性が介護現場に入ってきても、その現場が給料が安く、ボランティアや福祉の精神を強要されたりするので続かなくなるのだよ。こういう考えとは、女はケアや癒しに関わる仕事(有償、無償を問わず。重要だけど待遇は低きに流れる)、男は管理・運営など指導的な仕事という考えだ。男女での職種の分離とそれに関連する働き方やキャリアの分離のことである。
性別によって職種や職域が分離されて結構という考えは、別に日大の研究所教授だけではなく、それを一面記事にする新聞社の編集担当者も、また読者ももっているだろう。しかし、この考えは、介護だけでなく、看護や保育などこれまで女性が担うこととされてきた「ケア」の職場の賃金が安く押さえられていることにつながってくるから厄介だ。
先日研究会で聞いたことだが、全国に看護大学が145くらいできているそうだが、その卒業生の1割は卒業後1年以内にやめてしまうという。意欲に燃えて大学を出ても、厳しい仕事に見合うだけの待遇や対価が得られないかららしい。こうした考えは、この領域に携わる女性の地位を低くしているだけではなく、参入した男性をも苦しめているのだ。保育や看護、介護の職につこうとしている意欲ある男子学生さんを日ごろみているのでいつもこのことが気になっている。
このとんでも報告は、新聞の一面に載るようなネタじゃないのではないか。googleニュースでみてみると、東京新聞だけが掲載していることになっているが、、。