地方からの視点

東京での小さな研究会に出た。最近では農家女性たちが自分の名前をつけて野菜や加工品を道の駅や農協の直売場などで直接お客に売るようになって、中には1千万以上稼ぐ人も出ているよといったら、びっくりされ、そういう話は地方にいて気づくことだからもっと大声で言ったらいいと言われた。

男性中心的な制度や構造的な制約を「なし崩し的」に崩すことについて議論をしていた時のことだ。わたしはNHKの番組で見たことがあったし、わりに知られていることかなと思っていたのだが、女性学界隈ではあまり話題にならないことだったのかもしれない。

例えば、こんな方(農村女性起業家のモデルらしいのことです。

野田さんを始め、農家の母ちゃん達が中心となった「からり農産物直売所」は、今では、全国的に有名となり、「木蝋と白壁の町並み」と相まって、入り込み客数は年間約50万人、視察数も毎年約200団体に達し、利用者の90%は町外者で、高速道路の延伸で最近では、県外からの利用者が増加している。農産物直売所には350人が出荷者として登録しており、品数も年々増加し、430種類にも上っている。  

発足当初(平成6年7月)は出荷者100人、年間販売額4,200万円であったが、平成14年度の販売額は、3億9,000万円で、内子町の農業総生産額(28億5,000万円)の13.6%を占めている。 「からり農産物直売所」への出荷者の年間平均売上げは110万円を上回り、1千万円を超す農家も出現している。  

現在、「からり農産物直売所」の会員は、女性が63%、65歳以上が40%を占めており、従来の単作経営から、少量多品目栽培へ転換する農家や、有機農業を指向する農家も増え、既存の流通では商品とならないような規格外品、産直ならではの新鮮な農林産物や完熟フルーツ等が販売され消費者の好評を得るのみならず、農村の女性や高齢者が多数参加することで地域経済の活性化にも大きく貢献している。


ここにもあります。直売成功 家庭に笑顔

会長の掛端愛子さん(62)が言う。「04年度は1000万円以上売った人が4人で、最高は1300万円台。出発点はお母さんの小遣い稼ぎだったけど、もう家計の中心を占めている」? センターの成功は家族にも大きな影響を与えた。その価値に気付いた男性陣の有志は「かあちゃん支援の会」を結成した。センター周辺の除雪や草刈りを引き受け、イベントを手伝う。


 男性中心的な制度や構造的な制約を「なし崩し的」に崩すことについての議論をしていた時のことだ。「なし崩し的」に構造を揺さぶる例として、食管法が崩れ、農協の縛りが崩れて以来、生産農家の女性たちは自分で加工品がつくれることを強みとしてビジネスに成功している例があることを話した。こうやって女性たちは正面からぶつかるというより、制度の変わり目を利用して結果的に力を発揮したり、自分達の強みを活かしてお金を稼いだりして成功している例をフェミニズムはもっとちゃんと伝える方が女性たちにとっても応援になるということのようだった。それには同感だ。

  わたしは地方に住んでいるので、ご近所の農協の直売場やご近所のなじみの魚屋さんでも農家の方たちが作られた生産者名入りの野菜をちょくちょく買っている。味もしっかりあっておいしいし、季節の変わり目を感じることができる。こういう生産者の顔がみえそうな野菜を買って季節を味わうことができるのは地方に住んでいる醍醐味だなといつも思っていた。そういう中で農家女性たちの活躍の場が広がっていることは実感していたし、うれしく思っていた。だが、それは都会にいると実感の伴わない情報として見過ごされていくことなのかもしれない。

 地方にいるから気づく視点を大事に発信していきたいと改めて思った。