保育士の給与が安いのはどうしてか

先頃、高岡市が職員を募集していた。その採用情報を見て、保育士の給料の安さに改めて驚いた。以下に、その採用情報をあげておく。詳しくは、こちらを参照ください。


高岡市は以下だが、保育士の就職事情に詳しい専門学校の先生によると「神奈川県や他の都市からも求人が来ていますが、どこもだいたいそんなもんです。安いですよ」ということだ。しかも、先生は、「最近とみに、子どもだけでなく、保護者の指導まで保育士の責任とされているのに、その安い待遇は放置したまま。どうしたらいいんでしょうね」と嘆いておられた。


保育士152000円と、保育士だけどうして15万円台なのか。保育士は2年間専門学校に行く場合が多いので短大卒の一般事務職と同じ扱いになっている。しかし、保育士は一方では「専門職」とされているのだ。だとすれば、この給与では「専門職」であることが一切反映されていないということになる。


わたしは看護学校でも教えているのでつい看護師と比較してしまうのだが、看護師は、専門学校だと3年、大学だと4年の修業年数になる。専門学校3年の修業年数を終えた看護師の給与は、その専門性を加味しているからこそ、大卒の事務職172200円より16700円も高い188900円に設定されているわけだ。


以前、保育士に離職者が多いのはどうしてか、というエントリーをたてたことがあるが、その際に、「保育士は、正規公務員以外だと、せいぜい月額13万とか14万程度であった。」と、「民間だと給与は安い」が、「正規の公務員になれば高い」と考えていたが、そもそも正規の公務員の保育士給与が低いのだ。これが民間の保育士の給与待遇をも低くさせている原因ではないのかという疑いを持った。要するに、「専門職」といいつつ、その「専門性が給与に反映されていない」ということだ。


ことに、近年、「保育を行うとともに、保護者に対する保育に関する指導を行う」ことが求められるようになったのだそうだ。「子育て支援とくに保護者に対する相談・助言」という専門的任務が保育士の業務に正式に加わったのだという。単に子どもの保育を担当するだけでなく、地域に生活する親と子全体を見守り、適切な指導をするという任務のようだ。それは「保育士」名称が、2001年から、児童福祉法改正により、国家資格として認められてからだという。


家族援助論の専門家が書かれているというこちらを参照すると、以下のような記述があった。

従来の保母、保育士は、まさに「子どもの保育」というケアワークを任務とするケアワーカーの典型でした。今後その役割に加えて、「保護者の指導」というソーシャルワークを任務とするソーシャルワーカーとしての専門家の資格をも有する


誤解されないように言っておくと、2001年まで「保育士」の資格が正式に法定化していなかったことに問題の根があると考えている。「保育士」を単に、子どもをみるくらい女性ならだれにでもできること、という程度の業務とみなして、専門性について正当な評価をしてこなかったところにこそ、給与や待遇の低さがあるのではないだろうか。「保育士」名称決定までの男性保育者連絡会の運動と、保育士の現状については、『保父と呼ばないで』(かもがわ出版)に詳しい。わたしはこれを読んで、あまりに保育士の専門性を評価してこなかった歴史に、悲しみと怒りを感じてしまった。


看護師もかつては報酬が低かったそうだが、ある時から現在の程度までに(十分ではないにせよ、特に大卒看護師の報酬の不当性については別に書きたいくらいなのだが、、、)引き上げられたと聞いた。ヘルパーや介護福祉士などの介護職は安い安いと言われて、そう上がってはいないと思うが、待遇が悪いことについては広く知られていると思う。しかし、保育士の給与が安く、待遇が悪いことはまだあまり知られていないように思う。ぜひ考えていただけたらと思う。


やる気と元気のある学生さんたちの笑顔を見るたびにいつも応分の報酬が得られるようにということを思う。現在のような低い待遇では、志があるだけでは彼女たち、彼らは保育士という仕事を続けられないと思ってやるせなくなる。保育士を専門職として活用したいのであれば、給与待遇もそれ相応に引き上げてほしい。